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―――…
『…うん、そーゆー事♪』
さっきまで顔を真っ赤にしていた水谷が、
いたって冷静な態度で
パソコンの近くまで来た。
さっきの香りが
また何倍も俺に近づく。
――…て、
何意識してんだ、バカ。
相手は仮にも、
昨日逢ったばっかの女だ。
それなのに
何をドギマギする必要がある…?
どうして俺はこんなにも
カチカチになっている…?
…
「はぁ―――――…。」
『…あらあら。
でっかい溜息だこと。』
(…げッッ!!??ヤッベッッ!!!
つい――――――…。)
俺は咄嗟に手で口を塞いだ。
こうすれば、
欠伸っぽくみえるかな、なんて思った。
でもそれは
紛れもなく深い溜息で。
『…何か悩み事でも?』
「いやっ、…」
『…??』
水谷は不思議そうに眉をひそめながら『?』を浮かべている。
…
ああ、切実に後悔。
バッカヤロー、俺の口。
しかし、もうすでに
祭りの後…?
いや…、後の祭りだ。
今、
この状況で心を読まれてみろ。
俺はどんな顔して
コイツの家に帰るんだ?
ヤバい、ヤバい、
絶対ヤバい…ッッ!!!!!!!!
…
俺は心を読まれまいと、必死に会話を続けた。
――…
「…つか、こんな所に"呪いの傷"の本なんてねぇだろ…。
あったとしても応急措置の本とか…
そういうのじゃね?」
『…そっ、そんなの探してみなきゃ分かんないでしょ――ッッ!!!
早く探すよっ!!!!!』
「…いや、
どう考えたって無理だろ…。
大体、
お前は簡単に言うけど、これだけある本の中から
あるかないかも分からない1冊を探し出すなんて
かなりめんどくさ…
『い――――のッッ!!!!
探すって言ったら探すのッッ!!!』
――…
―――― ガシッ…!!!!
…
(え…?)
「ちょっ…水谷!!!?????」
水谷は
俺の腕を掴み、
まるで恐竜が歩くようなドスドスした歩調で図書室の奥へと進む。
「…痛ッてぇ。
痛てぇってば、水――…
『うっさい!!!!!!』
「…………。」
…女は、やっぱ怖ぇ生き物だ。
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