Crime-Destiny

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「チームを組む気は無いのか、バーサーカー」  危険度の高い依頼を優先しているから、心配なのだろうか。店主はそんな提案を持ちかけてきた。 「チーム、ねぇ」  他の呪いを受けたやつらと共闘する、という事だが、報酬が山分けになる、というデメリットはある。効率や安全性は上がるとはいえ、呪いはなんのために使おうと所詮呪いでしかない。 「他のやつと共闘して、俺がそいつを少しでも悪と見なしてしまった場合を考えてみろ」  仲間割れなんて話じゃ済まない。俺は手段も場所も時間も考えず、そいつを殺しにかかるだろう。  相手が死神のように不老不死だったなら構わないかもしれないが、そんな呪いは極めて稀だ。普通は致命傷を受けたら死ぬ。そこは人間と変わらない。 「ヒーローあたりなら問題無かろう」  引かない店主は言った。  ヒーロー。それは、呪いの力を駆使し正義となったやつの事を言ってるわけじゃない。ヒーローという呪いを受けた、あるやつの呼び名だ。 「勘弁してくれ。あいつはダメだ」 「何故?」 「不憫過ぎて見ていられない」 「成る程な」  呪いを受けてる俺でさえ同情してしまうような、哀れな呪い。それがヒーローだ。  呪いには様々なものがある。ヒーローと聞けば聞こえは良いが、しかしその内容は『助けを求める人間の心の声が聞こえる』というものだ。しかも、距離や時間に制限は無く。俺がそんな呪いを受けたらすぐに発狂するだろう。 「とにかく、チームは組まない。特に俺は、1人でやらなきゃ意味が無いからな」  妥協は出来ない、という意思をはっきり伝え、店主に依頼の資料をせがむ。 「そうかい。だがなぁ、お前さん。お前は他のやつらと違って、1人じゃないという事を忘れるなよ?」  資料を渡しながら、店主はそんな警告をしてきた。養っている人間が居るから無理をするな、という事なのだろうが、見当違いもいいとこだ。俺は、支えなきゃいけない人間が居るから多少の無理をしなきゃいけない。  それに俺はバーサーカー。狂断罪者だ。  化け物には化け物なりに、化け物としての生き方がある。俺はそれを続けなければいけない。  ――最後の吸血鬼を殺した時に、そう決めたのだから。
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