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依頼は早い者勝ちだ。というわけで、報酬が良いやつから順に5つ、選ばせてもらった。
死神は1日に数件熟していたらしいが、普通は数日かけて1件だ。そして俺は1週間かけて4つの依頼を熟し、最後の依頼に取り掛かっていた。とある宗教団体の実態調査、及び悪性が認められた際には速やかな壊滅、というものだ。
酷いご時世だ。事前に調査された様子だと、その宗教団体は故意に呪いを生み出しているとか。
呪いを神の力だの裁きだのと偽り、広めている可能性があるらしい。事実だったら大変、なんてレベルじゃない。
黒いコートに身を包み、その宗教団体の幹部が集まる教会に忍び込む。
呪いを使って建てたとしたら、この教会ごと叩き潰したいものだ。
しかしあの店主の情報網は本当に異常だな。会議が開かれる場所も、時間も、何もかも情報通り。まるで、本当は俺達に仕事なんか回さなくても解決出来たのに、解決される直前で保留してあったかのように。
まぁ、そんな事、今は関係無いか。
今は、会議を盗み聞きするほうが先決だ。
『それでは、始めるぞ』
潰れ掠れた低い声が仕切る。
『『はい』』
いくつかの相槌。
しかし、その前に、と、若い女の声がそれを遮った。
『侵入者を、排除しましょう』
「!?」
任務開始早々にも程がある。会議室にも入らず聞き耳を立てていただけだというのに、突如、俺の真横で何かが爆発した。
火薬による爆発では無い。強い衝撃による破裂だ。
俺はそれに気付くより先に身体が動いていたおかけで、間一髪直撃を免れた。
「どういう事だ、おい」
バレるようなヘマをした覚えは無い。だが、睨んだ爆発跡には、体長2メートルを超す何かが立っていた。
見覚えがある。それも、呪いを受けた後の記憶に、ではなく、エクソシストだった時の記憶に、だ。
「完全に、黒。なんて言葉で片付くレベルじゃねぇぞ、これ」
2メートルを超す体躯。無理矢理押し広げたかのようにアンバランスな筋肉。血色の薄い灰色の肌。
ゴブリン。
正確には、魔獣の呪い。
獣の魂の集合体に憑依された人間の末路だが、それは獣の魂の集合体が入り込める程に巨大な心の穴が無ければ、末期に至る前に消滅するはずの呪いだ。
しかし、目前に居るゴブリンは、明らかに、呪いの末期に至っていた。
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