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「君は既に死んでるんだよ」
――は? 何?
俺は目の前に佇むやけに神々しい人物に、世紀末の神拳使いの決め台詞みたいなことを言われていた。
線が細くイケメンに分類されるその男はなんのこともなく、至って普通に俺に死の宣告していた。
「いやいや、ありえないだろ。俺さっきまで下校してて、これから読み残してた本を読むつもりだったんだぞ。いきなり死にましたなんて、信じられるかよ!」
まあ、当然の反応だ。
怒りの台詞を吐きながらも、俺の思考は至って冷静だった。
むしろ、心はワクワクして浮き足立っていた。
「仕方ないんだ、東城桂太君。君は勇者召喚に巻き込まれてしまった。神である僕の所に居る時点で、君の前の世界での人生は終わりを迎えているんだ」
男にしてはサラサラとした金髪を揺らしながら、その神と名乗る男は、諭すように俺に語りかける。
「……ほんとに? もう、戻れないのか?」
「残念だけど……ね」
本当に申し訳なさそうに答える。
その様子から、もう本当に戻れないのだろう。
その答えを聞いた俺の怒りはもう先程より治まりつつあった。むしろ、なんだか冷めていくようであった。
「……じゃあ、俺はこれからどうすればいいんだ?」
「前の世界では、既に死んでるというか、存在が無かったことになってると言ってもいい。でも君は巻き込まれただけだし被害者みたいなものだから、このままじゃ可哀想だね。
……桂太君、君は前とは違う世界でも生きられるなら行ってみたい? ただし一度行くと死ぬまでそこで暮らすわけだけど」
――ドクン!
その言葉に心臓が強く鼓動を刻んだのがわかる。
俺はこれまでずっと待っていた。
こんな非日常の展開がある場面を。
今までのつまらない日常を打破してくれる。そんな展開を。
「……その世界っていうのは、どんな世界なんだ?」
「行くつもりかい?」
神は意外そうな顔をした。
自分で勧めたんじゃないか。
なぜ意外そうな顔をする。
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