プロローグ

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十分のじゃんけんでの格闘、十分の穴の早掘り競争の後、俺と光太はビニール袋に包まれた四つの箱を掘り当てた。別に何かしら高値で売れる物品が入っている訳ではないが今回の目的はこの箱にある。 俺と光太はお互いを見遣り軽くハイタッチを交わした時、 「二人ともお待たせ!!ご飯出来たよ!!」 後方の開け放たれた広い障子部屋から彩香の声が聞こえた。 「おっ、待ってました!」と言い残し我先に、とばかりに駆け出す光太の後ろ姿を眺め、こんなにはしゃいだのは何年振りだろうと思いながら、箱を抱えて後を追った。 それにしてもこの屋敷は広い。家を囲む塀から母屋まで70メートルはあるだろう。普通の家にしてはデカすぎる。 そんなこんなで光太に追い付いたところ、光太は彩香と何やら話し込んでいた。 「で、実際のところ龍介との生活は充実してる?あいつ帰ってもゲームの話ばっかじゃない?」 などと失礼極まりない質問をするので「お前は阿呆か!」と思わずツッコんでしまった。拳が痛くなったがこの際どうでもよかった。 「そんなことないよ。帰ったら真っ先に私の体を心配してくれてるし、とっても優しいよ」 「俺の負傷は無視ですか!?」 「お前が悪い」と、俺。「まだ聞きたいことが--」 諦めの悪い光太に神の怒りに触れた。 「光太、それ以上ヒノを困らせたら怒るよ」 陽子という名の我らが神様の。 「ヒノ、お膳立て手伝ってくれる?」 「もっちろん!!」 と、彩香の元気な返事に対して 「龍介、アンタはそこのバカ引っ張って顔と手を洗って来て。食事はそれから」 「あっ、はい、分かりました」 俺は先程の鬼のような表情にビビりまくって他人行儀な返事をしてしまった。 この女いつどこから沸いて来た、などと考えていたせいなのか、文字通り光太を『引きずって』洗面台に向かっていた。 「痛い痛い!!止めろ龍介!!!!」 と、今頃気付いた俺だが、正直コイツに構っていると食事にありつけなくなりそうなので「あ、悪い」なんて適当に流してそそくさと顔と手を石鹸で洗って食卓へと逃げた。その時後ろで 「何か今日、ツイてねぇ・・・・」 と小さな呟きが聞こえた。 ・・・・まぁ、自業自得だと思うぞ。
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