第一章 鳴海龍介の苦痛

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2009年4月 「ぶえっくし!!」 俺、鳴海龍介は盛大にくしゃみをし、鼻を啜った。 「リョーくん大丈夫?」 俺のすぐ隣を歩く少女が心配そうに俺の顔を覗き込む。 「ん、大丈夫」 そう一言、その少女、日ノ木彩香に返事を返す。 彩香とは両親が旧知の友で家族ぐるみの付き合いの上家が隣なので他人とは言えない程気心が知れている。本人には恥ずかしくて言えないのだがもの凄く可愛い容姿をしており、すれ違う人の俺への視線が痛い程男を惹き付ける魅力がある。 並んで商店街を歩いているとふと彩香がこんな言葉を口にした。 「新しいクラスで仲良くやっていけるかなぁ・・・・」 「お前なら大丈夫だろ。それより同級生の奴らが野球上手いかの方が心配だ」 「あ、やっぱり野球部なんだね?」 俺達は今日から中学生で、真新しい制服を身に纏っている。そして俺は野球部に入部する予定だ。少年野球でエースを務めており実力は中々のものだと自負している。 そんな他愛ない話を交わし、商店街を抜けると一組の男女が俺達を待っていた。
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