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そんな私を見つめるジョーカーの瞳は、哀しげに揺れていた。
「いや。だからこそ、学校に通ったことがない藍だからこそ、俺は君に依頼したんだ」
「……それはどういう、」
「藍。君、自分以外の人間についてどう思う?」
「は?」
ジョーカーの問いに、思わず口を閉ざす。
自分以外の人間について?
そんなの、考えるまでもない。
「分かりません。というか、他人に興味はありませんので」
「……藍ならそう言うと思ってたよ」
ジョーカーはくすりと笑い、そして私を真っ直ぐに見つめる。
「だからだよ」
「はい?」
「俺は、藍に人と関わって欲しいんだ」
「………」
理解出来ないといった表情を浮かべる私に、ジョーカーは続ける。
「君は、自分以外の人間はどうでもいいと思ってる。死のうが生きようが構わない、自分には関係ないのだから、と」
「………」
「でも、それじゃ駄目なんだ。そんな考えじゃこの業界は生き残れない」
ジョーカーの言葉に、私は思わず眉をひそめた。
「“仕事において、他人に同情することは命取りになる”……そう言ったのは、ジョーカー。貴方では?」
「ああ、確かにそう言った。でも“同情”と“信頼”は違う」
「………」
同情と、信頼?
ジョーカーは何を言っているのだろう。
ホーンテッドに入って以来、ここまで彼の考えが読めないことはない。
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