その少女、殺し屋

8/10
前へ
/59ページ
次へ
そんな私を見つめるジョーカーの瞳は、哀しげに揺れていた。 「いや。だからこそ、学校に通ったことがない藍だからこそ、俺は君に依頼したんだ」 「……それはどういう、」 「藍。君、自分以外の人間についてどう思う?」 「は?」 ジョーカーの問いに、思わず口を閉ざす。 自分以外の人間について? そんなの、考えるまでもない。 「分かりません。というか、他人に興味はありませんので」 「……藍ならそう言うと思ってたよ」 ジョーカーはくすりと笑い、そして私を真っ直ぐに見つめる。 「だからだよ」 「はい?」 「俺は、藍に人と関わって欲しいんだ」 「………」 理解出来ないといった表情を浮かべる私に、ジョーカーは続ける。 「君は、自分以外の人間はどうでもいいと思ってる。死のうが生きようが構わない、自分には関係ないのだから、と」 「………」 「でも、それじゃ駄目なんだ。そんな考えじゃこの業界は生き残れない」 ジョーカーの言葉に、私は思わず眉をひそめた。 「“仕事において、他人に同情することは命取りになる”……そう言ったのは、ジョーカー。貴方では?」 「ああ、確かにそう言った。でも“同情”と“信頼”は違う」 「………」 同情と、信頼? ジョーカーは何を言っているのだろう。 ホーンテッドに入って以来、ここまで彼の考えが読めないことはない。 _
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加