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戸惑う私に追い打ちをかけるように、彼は続ける。
「藍は強い。それは、俺を含めホーンテッドの殺し屋なら皆思っているだろう。
でも俺は、藍に本当の意味で“強く”なって欲しいんだ」
「本当の、意味……?」
ジョーカーは頷く。
「今の藍の強さは不安定だ」
「……何故ですか」
「藍は感情の起伏が乏しいから。確かに感情を鎮め、淡々と仕事をこなせることは、この業界で生きる者にとっての強味だ。
でも、感情を無くすことが全てじゃない」
「………」
――私の強さは、不安定。
それは、今までの私を否定されたも同然だった。
ジョーカーは私の強さを買ってくれている。
だから、危険な任務を真っ先に私に託してくれた。
そして私は彼の期待に応えるように、何も考えず、感情を鎮め、ただ黙々と任務をこなす。
それでは、駄目なのだろうか。
「ね、藍。良い機会だ。天音学園で、本当の強さを見つけておいで」
「………」
「勿論学園に通ってる間も任務は与える。まぁ、気晴らしだと思ってさ」
「………」
「ね?」
にっこりと笑うジョーカーに、私は溜め息を吐いた。
……これは、断れないな。
「分かりました。この任務、引き受けます」
「そうか、頼むよ。詳しい依頼内容は、知り合いが説明してくれると思うから。
あ、天音学園は寮生活だからね。荷物を纏めておくこと」
「……はい」
『失礼します』と頭を下げ、私は部屋を後にした。
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