その少女、殺し屋

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カツ、カツ、カツ 大きな地下駐車場に、私の足音が響く。 季節は梅雨。 この季節特有のムシムシとした空気が、私の身体に纏わりついた。 ―――嗚呼、早く終わらせて帰ろう。 「ヒッ……く、来るな!来るなぁああああ!!」 目の前で腰を抜かしている男は、私に恐怖で見開いた眼孔を向ける。 可笑しな男だ。一体何に怖がっているのやら。 私は背負っている愛刀を抜いた。 刀身は血のように紅く、刀にしては軽い。私の大事な相棒(パートナー)。 「明石達郎。ある方の依頼により、ホーンテッド所属、“氷華”が処分致します」 「ままま、待て!!誰だ、誰が依頼した!!あいつか?いつも俺を恨んでいた政敵の……っ!」 ……煩い。 私が刀の先を喉元に向けると、男はヒュッと声を漏らして静かになった。 「誰が依頼したのか、それはお教えすることが出来ません。ホーンテッドの決まりですから。 それに………」 私は軽く微笑み、刀を振り上げた。 「死んでしまう人間が、知ったところで何になるのです?」 「や、やめ……うわぁあああああ!!」 ザシュッ 男から飛び出した鮮血が花びらのように舞う。 私はこの瞬間が大好きだ。 どんなに綺麗な花も景色も、この光景に勝る感動はない。 私は紙で刀の血を拭き取り、足元に転がっている“人間だった肉の塊”を一瞥する。 「任務、完了」 そして、“彼”に報告する為に家路を急いだ。 _
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