82人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の繁華街は、嫌いだ。
生気で満ちた人々で騒がしいから。
そんなことを思いながら、私は夜の街を行く。
途中チラチラと通行人の視線を感じた。
きっと理由は一つ。
こんな夜更けにセーラー服姿の女が歩いているからだろう。
しかも、背中には布にくるまれた刀のオプション付き。
私は彼らの視線をかわし、路地裏に入る。
右、左、右、左……
クネクネと入り乱れる道を進むと、一つの民家にたどり着いた。
何の変哲もない、ただの一軒家。
私は迷うことなくインターホンを押した。
すると、程なくして無機質な女性の声が聞こえる。
「はい」
「“氷華”です。任務完了しました」
「お疲れ様です。どうぞお入り下さい」
その声と同時に、カチャリと玄関の鍵が開く音。
それを確認し、私は玄関の扉を開けた。
――その先に広がっていたのは、玄関でも廊下でもない、下へと続く長い階段。
私は慣れた様子で、その階段を下る。
暫くすると、一つの扉にたどり着いた。
鉄製の、とても頑丈そうな扉。
私は胸元からカードキーを取り出し、横の機械へそれを差し込む。
ピーッという機械音の後、私はゆっくりと扉を開けた。
_
最初のコメントを投稿しよう!