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「報告は以上です。他にご用件は?」
「うーん……」
ジョーカーは言葉を濁す。
何か、言うのを迷ってるかのように見えた。
珍しい。彼がこのような態度を取るなんて……。
思わず眉を潜めると、彼は大きな溜め息を吐いた。
「最後まで迷ってたんだけど……しょうがない。藍が一番の適任者だ」
「……?新たな任務でしょうか」
「まぁ、ね」
ジョーカーは一度言葉を止める。
そして、信じられないようなことを口にした。
「学園に潜入してこい」
「…………はい?」
学園?
……聞き間違いだろうか。
「あの、もう一度お願いします」
「だから、藍には学園に潜入してもらう」
「………」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。
しかし、次に私を襲ったのはとてつもない戸惑い。
「あの……どういうことでしょうか?学園に潜入、というのは」
まさか……生徒になれということなのか。
そう言うと、ジョーカーを緩く首を縦に振った。
「そう。藍には、俺の知り合いが経営している“天音(アマネ)学園”に生徒として通って欲しいんだ」
「は……?」
私が、学園の生徒?
……馬鹿げている。
私達殺し屋は、普通ジョーカーから言い渡された任務を断る権限はない。
しかし、今回だけは口を挟まずにはいられなかった。
「私は、ホーンテッドで高校卒業レベルの学力は身に付けました。今更学園に通う必要性が感じられません。
貴方は私が適任者と言いましたが、他に適任者は沢山いるはずです」
先程会った狂華や闇夜も、どこかの高校に通っていると聞いたことがある。
何も、学校に通っていない私にわざわざ頼まなくても良い筈だ。
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