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次の瞬間、犬の短い悲鳴が聴こえた。祐次は無意識につぶっていた目とうつむいていた顔を上げると、犬は地面にひれ伏せていた。よく見ると犬の体には何かが突き刺さっていた。苦しいのか犬はうめき声を上げて、立ち上がろうとしている。
「あなたの“コエ”に従って、お助けいたします」
突如、誰かの声が聞こえると遠くにいたゾンビに何かが刺さり崩れ落ちるように倒れた。次に立ち上がろうとしてうめき声を上げている犬にも何かが刺さった。
小百合は涙で目を濡らしながら、顔を上げて襲い掛かるはずの化け物が倒れているところを目にした。するとその二体は煙とともに消えていった。
「なにが、起こったの…?」
「お怪我はありませんか」
静かな空間に響くような落ち着いた声。見ると目の前には青年が立っていた。オールバックでスーツの男。
「…誰だよ、あんた」
「それについての問いかけはあとにしましょう。それより、この方の怪我を治さねばなりませんね」
と淡々とした口調で小百合に近づき、跪いた。小百合のひざを見るとかすり傷があった。青年は軽症であることを安堵するとそこに手をかざすと淡い光が漏れ出した。
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