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「そんなもん、分かってる。長居してれば、風邪引く。意外とお前は風邪引きやすいからな」
文句ありげな小百合はため息をつきながら答えた。
「ふぅん。お気遣いどーも」
「じゃあ、帰るぞ。帰って勉強するんだろ」
少年、祐次は小百合に目を向けた後、背を向けて歩き出した。小百合は思い出したくもないものを思い出したような顔をして、眉にしわを寄せながらとぼとぼと歩き出した。
「勉強めんどくさいよー、祐次ぃ」
「めんどくさいじゃない。自分でやるとか言ってめんどくさいとはなんだ」
とぼとぼと歩く小百合に説教すると、祐次は呆れた顔をした。すると小百合はボソリとつぶやいた。
「勉強なんて、なければいいのに。そしたらテストとかないんだろうなぁ」
「なんだよ、いきなり」
「いや、勉強しなくてすむんだろうなと思ってさ。祐次もそう思わない?」
小百合は笑みを浮かべながら言うと、携帯の着信音が鳴り響いた。この音はメールだろう。立ち止らず、携帯を開いて見てみると見知らぬところからのメールだった。
『あなたの“コエ”をお聴きしました』
「なんだろう、このメール」
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