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「うっ、後ろ」
小百合は祐次の振り向きざまに後ろに行き、しがみついた。
「なんだ、こいつ」
見たくもない。祐次が怖気づいた声を出している。
「ヴ、ァァァァ……」
祐次は後ずさった。その何かは全身が腐敗しており、うなり声を上げている。ずる、ずる、と引きずる音。どうやら足を引きずりながら歩いている。まるで、ゾンビのようだ。ふただび、うなり声を上げて口を開閉させている。
すると、ゾンビのような化け物にまた違うモノが姿を現した。今度は犬のようなモノ。それは目が血走っており、口の端から涎(よだれ)が垂れ、牙が剥き出しだ。
「小百合」
祐次は冷や汗を掻きながら、後ろにいる小百合に話しかけた。小百合は無言だ。怖くて声が出ないのだろう。
「逃げるぞ!!」
小百合ははっとした顔をすると祐次は素早く彼女の右手首を握り、化け物たちがいるところは逆方向の後ろに逃げた。小百合の顔は青ざめている。後ろを見ないだけでも幸いだろう。
逃げ出した二人に気づいた化け物は二人を追いかけた。
「ヴアァァァ!!」
「ガァァァッ!!」
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