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後ろを見る余裕が出来ない。たぶん、あの化け物たちは自分たちを食べようと必死に追いかけているところだろう。そんなことを考えてしまえば、自分たちは逃げなければならない。
うなり声が聞こえる。祐次はふと走りながら見たくもない後ろを見た。ゾンビより犬のほうが速い。犬はそこら中に涎を撒き散らして走っているのだろう。すごく速い。
「きゃあッ!!」
突然、何もないところで小百合は足を躓(つまず)いて転んだ。
「小百合!」
転んだ小百合に祐次は駆け寄り近づいた。小百合は涙を浮かべていた。祐次は自分たちを追いかける化け物を見た。近づいている。徐々に近づいている。
「いや…死にたくない…」
小百合は泣きながら、祐次にしがみ付いて泣き崩れている。小百合は腰を抜かしているのだろう。立つ気配はない。どうすればいい。もう、逃げることなんて出来ないはずだ。
「ガウァァァ!!」
犬はやっとたどり着いたと言わんばかりにありえない飛躍で、宙を舞った。小百合と祐次は同時に犬を見た。血走っている目と鋭利な爪は自分たちに向けられている。
「助けて…誰か…!!」
小百合はかすれたような声で祈った。
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