STORY.①

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    「私は貴女様の゙教育係゙ 翼様からも゙宜しぐと仰せ付けられておりますので、これからは厳しくさせていただきます──…     覚悟、しておいてくださいね」     最後に笑顔も忘れずに 要はその場をあとにした     百合奈はそんな要の後ろ姿を睨むように、両手の拳を握り締めていた     要の姿が見えなくなると小さな声で 「あの人…嫌いだわ」 と言葉を吐き捨て百合奈もその場をあとにする     その時要も 「こりゃ手を焼くか!?」 と心の中で思いながら軽く自分の頬を掻いていた     ───────────── ────────…     ーコンコンー     要は執事長室の前に居た     「───はい」     暫くすると中から返事が聞こえると、要は扉を静かに開けた     「ただいま戻りました」     中に居る人にお辞儀をしながら上半身をあげる     「ご苦労様です これから他の者達に紹介しますのでこれに着替えてください」     そう言って長岡は燕尾服を差し出しながら、奥の部屋を指した     「あちらで着替えてください」     要は返事をしながらそれを受け取ると長岡の横を低い腰で通り、奥の部屋へと入っていった     長岡はそれを見送るとやりかけの仕事を片付けるようにまた椅子に座り直す     暫くすると燕尾服に着替えた要が着ていた洋服を片手に出てきた     それを横目で見ると長岡は用意していたのか近くにあったカゴを要に差し出す     「?」     もちろんわからない要は戸惑いを見せていた     「それを持ったまま行くつもりですか この中に入れてください」      「あっ、はい」     要は慌ててカゴを受け取り持っていた洋服を畳ながら入れていった     「カゴはここに置いておいて結構です あとで貴方の部屋へ案内しますからその時に」     「はい」     要は邪魔にならないようにドアの近くにカゴを置くと、長岡も椅子から立ち上がり分厚いファイルを持ちながら扉に向かう     要は直ぐ様扉を開けると長岡は驚いた表情を一瞬見せ、またいつもの表情に戻った     「よい心掛けですね   相手を思い行動にするのは良いことです」     長岡の言葉に要はお辞儀するだけで、決して言葉に出さなかった     「(良い教育を受けているな)」     長岡も言葉に出さず要を褒めた    
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