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「あはは
すまないね要くん
どうも人と接するのが苦手みたいで───」
そう言う翼は本当に申し訳なさそうにしていた
「いえ
気にしていませんから
大丈夫です」
要はゆっくり立ち上がると顔が引き吊るも笑顔を忘れずに努める
そんな要をみて翼は苦笑いしながら百合奈に話をする
「百合奈
僕はまだ要くんとお話があるからお部屋に居なさい
──拓真」
百合奈の背中を押しながら長岡に百合奈を預ける
長岡は返事をすると百合奈を連れて再び部屋を出ていった
2人が出ていって暫く沈黙が流れた
その沈黙を破ったのは翼のため息に近い言葉だった
「ハァ…
すまないね…」
「ぇ?」
意味がわからず要は声が出ていたかわからないほど低い声だった
「──…百合奈だよ」
翼は要の言葉が聞こえたのかわからないがそう答えた
「あ……い、いえ」
「あの子はまだ10歳なんだが、あまり人に心を開かないんだ」
「……」
要はどう答えたらいいかわからず要は翼の次の言葉を待った
翼もそれがわかったらしく話を続ける
「僕たち夫婦は見ての通り音楽に就いている」
そう言って両手を広げ部屋を見渡す
それにつられ要も周りを見た
「本当は今日妻も紹介したかったんだが都合が合わなくてね
今はパリに居るんだ
僕も明日発たなければならないんだ」
「それではいつも──…」
「───…
いつも淋しい思いをさせているんだよ
わかってはいるんだが、百合奈は決して顔には出さず言葉では一切言わない
それもあってあんな表情がない娘になってしまったこともわかるんだ
今では百合奈の幼なじみの毬那ちゃんだけかな
百合奈が心を許しているのは…」
そこまで話すと翼は自分の椅子に座ると深く腰を埋めた
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