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──────…
「失礼します」
要は深々と頭を下げて翼の仕事部屋を出た
扉が閉まると要は思わずため息がこぼれる
ー あんな子でも百合奈は大切な愛娘だ
手を焼くだろうが百合奈を宜しく頼むね ー
部屋を出ようとした時に話した翼の言葉を思いだしていた
「あんな辛そうな顔をするならなんで───」
カタン
誰か居たのかと、あまり声が大きくもない独り言を聞かれたと思い口を嗣ぐんで振り向けば───
「──…百合奈様」
思わぬ人にビックリして要は一瞬目を見開いた
それもほんの一瞬で直ぐに笑顔をつくり百合奈にお辞儀する
「どうされましたか?」
「……」
「あの…
百合奈様?」
要が聞いても何一つ答えない百合奈はただジッと要を見ていた
「………
(なんなんだこのガキは!)」
そう思うも笑顔だけは忘れず要もただ百合奈をみていた
二人顔を見合わせていたのは数秒だっただろう
すると突然百合奈は踵を返すと数歩歩みを進めた
「百合奈様?!
何かご用だったのでは」
要のその問いかけに百合奈は歩みを止めると要に振り向かず言葉を発した
「──…あなたもその笑顔なのね
まるで人前で見せる私みたい
そう…例えるなら鏡ね───」
そう言って百合奈も作り笑いをしながら要に振り返る
「──!!」
その言葉にビックリした要
今まで自分の作り笑いを見破る人は片手で足りるぐらい極少数だった
それをたった数秒顔を合わせただけの、作り笑いを見破るなんて要もビックリなのだ
すると要は口許を緩め、本来見せる妖艶な笑みを浮かべる
「貴女様の鏡、ですか…
それは百合奈様も同じことですよね」
「?」
百合奈は要の言ってる意味がわからないのか眉間にシワを寄せて要を見ていた
いや半分ニラミに近いだろう
そんな百合奈の視線をかわすように要は瞳を閉じると、今度は作り笑いではない本当の笑みを見せる
「゙貴女様の笑顔も私の鏡ですね゙
と言うことです」
「……」
要の言葉に百合奈は怪訝そうな表情を浮かべる
そんな百合奈にお構い無く言葉を続けた
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