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菜穂
何か奇妙な音がして暖かく心地よい眠りから現実に引き戻された。
辺りの風景は最後に見たものとは明らかに異なっている。
涼しげな木陰を見つけてそこで眠っていたはずだが涼しげな木陰も瑞々しい草も見当たらない。
土と乾いた肉と何かが腐ったような臭いが風に混じり鼻の奥をくすぐった。
辺りは薄暗く細かい土煙が風に舞い太陽の光を遮っているためやや薄暗い。
最近は太陽の光も強く非常に困っていたのでいくらかマシと言えるかもしれない。ただ細かい砂が時折目に入るため目が痛い。
何かとても強い違和感を感じる。何かが欠けているような。そこまで考えてようやく違和感の原因に気づいた。
とても、静かなのだ。普段は腹立たしく不快なほどにあちらこちらに溢れ返っていた様々な音がほとんどしない。
するのは風の音と自分の呼吸の音くらいだ。
静けさが体に染み渡りまたこのまま眠ってしまいたいくらいに心地よく安心感がある。それなのに意識の端の方で理不尽な不安感がくすぶっている。
その時また何か音が聞こえた。先ほど眠りを邪魔した音だ。
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