33人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
手元にあった鞄を肩に掛けて音の方に歩き出す。土煙でぼやけたビルのような建物の影が見えた。
足元は舗装されてはいるが石ころが転がり所々ひび割れている。
鞄の中をみると食べ物が詰まっていた。ほとんどが果物や肉等を乾かしたものだ。少し取りだしてかじりながら歩く。
グニグニとした食感でおいしい。
やがて壊れた赤いランプのついた建物の前に差し掛かった。交番だろうか。
中を覗き混んでみたがガラス戸は細かい砂で傷ついているからかほとんど見えない。ガラス戸を引くとザリザリと砂が擦れる音がしてゆっくりと開いた。
建物の中からむわっと大量の血と内臓の臭いがして思わずむせた。片手で口と鼻を塞ぎ目を細めて中の様子を見た。
机や椅子、書類などが散らばりあちこちに血が撒き散らされている。何か有ってからそれほど時間がたっていないようだ。奥の方に人の腕が転がっているのが見えた。
腕の方に慎重に近付く。足元の書類を踏みガサリと音をたてた。
腕には比較的小さいが重厚な銃が握られている。少なくとも拳銃ではなさそうだ。おそらくはショットガンだろう。
転がっている腕からショットガンを取った。
意外とずっしりといている。弾もたくさんありそうだ。
この腕の主はこれを使わなかったのだろうか。
奥で何か物音がした。
ここを荒らした張本人かもしれない。
足元に散らかった書類を踏んで足音を立てないように慎重に外に出た。
カラカラと音を立てて缶が転がる。
そこであの腕からショットガンを取ってそのまま持ってきてしまったことに気づいた。
戻しに行こうかと思ったが交番にいた誰かに気づかれたら良くないことが起きそうだ。
仕方ない、借りたと思うことにしよう。
右側に小さな公園がある。
あずまやの下にベンチもある。とりあえずそこでゆっくり休もう。
最初のコメントを投稿しよう!