菜穂

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目を開くと木目のある屋根が見えた。 周りは昨日と変わらず乾燥していてとても静かだ。ジーパンのベルトに無理やり昨日拾ったショットガンが差し込まれている。 固い公園のベンチで眠ったからかあまり眠れず肩や腰が痛い。 明らかに都会のような建物が並んでいるのにこの人気のなさはどういうことだろう。まるで用が済んで打ち捨てられたかのようだ。 しかし、全く人がいないということはないだろう。昨日の交番に死んでいるとはいえ確かに人はいたのだ。きっと探せば誰か見つかるだろう。 ゆっくりと街の中を見て回る。どの建物も静まり返り人どころか生き物の気配もない。 ガチャガチャと金属がぶつかり合うような音が聞こえた。 振り返ると逆光でよく見えないが角ばってあちこちから棒のような物が突き刺さったような人っぽいものがこちらに向かってくる。 それはガチャガチャと音を立てて目の前で止まった。 よくみるとそれはくすんだ色の重厚な鎧のような物を着て沢山の銃や刀を身につけた軍人のようだ。 軍人は何も言わない。顔もすっぽりと覆われているためどんな顔をしているのかもわからないがおそらくは男だろう。 彼は沢山の銃の中から1本取り出してこちらに向けた。 彼は相変わらず何も言わない。さっきまでガチャガチャ音を立てていたのが嘘のように静かに引き金に指を当てた。 なんとなくだが、とても嫌な予感がする。うろうろと動いた右手がベルトに差したショットガンに触れる。 特に何か考えた訳ではないがベルトからショットガンを引き抜き構えた。ゆっくりと慎重に後ろに下がる。 彼の指に力が入った。ほとんど音がしなかったが彼の銃から飛び出た弾が腕をかすった。 慌ててショットガンの引き金を引いた。 物凄い破裂音がして腕が跳ね上がる。当たったかもわからないがとても恐ろしくなって彼に背を向けて走った。 近くの建物の戸を開け中に体を滑り込ませた。その間にも何発か撃ってきたらしく弾が壁に当たって弾ける音がした。 建物の中はとても暗いが全く見えないというわけでもない。ぼんやり柱が何本かたっているのが見える。その内の1本の陰に身を潜めた。耳を澄ませて息を殺して彼の様子を探った。 彼は戸を開きはしたが中にまでは入ってこない。私を探しているのだろうか。目で見て確認したいがここから出るべきではないだろう。 やがてガチャガチャという音が小さく遠ざかっていった。
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