菜穂

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ゾンビの集団に襲われてから1夜たった。また出てくるのではないかと思い気が気じゃなくて全く眠れなかった。 しかし現実にあの様なモノが出るものなのだろうか。 あそこまで腐ってしまえば普通の人なら死んでしまうはずだ。 それにあの好戦的、いや衝動的な攻撃性は異常だ。 実際に見たことはないが、まるで狂犬病に感染した動物のようだった。 噛まれたらかなりまずいかもしれない。 警察署か保健所かのどちらかにいけば、何か詳しい事がわかるかもしれない。 ブロック塀に地図が立て掛けてある。土埃が付き掠れてほとんどよく見えないがなんとか警察署のマークと現在地を確認できた。 保健所がどこかは分からなかったが警察署はこの道をまっすぐ行って右手にあるらしい。 建物の壁が茶色く汚れているがそれが土埃なのかアレの肉なのかは判断できない。 警察署に到着した。自動ドアだったが前に立っても開かなかったのでドアの隙間に指を差し込み無理矢理引っ張って開けた。 警察署の中は血と内臓のむせかえるような臭いで満たされていた。そういえば交番でも同じ臭いがしていた。 警察署は交番と同じように荒らされ警察官と思われる制服の人が倒れていた。 誰か警察に恨みでもあってこのようなことをしているのだろうか。とても迷惑だ。 生きている人はいない。これでは何も聞けないので諦めて他を当たろうと思う。 出口に向かう途中足に固いものが当たった。 拾い上げて見てみるとベルトに刺さったショットガンによく似ている。 さてショットガンが2つあったところでかさ張るだけだ。両方同時に使うなどとてもできそうにもない。 だからといってここに捨てていくのももったいない気がした。 とりあえず持っていき後から考えよう。 警察署の外に出て道なりに進む。 やがて小綺麗な建物が見えてきた。小綺麗といっても周りと比べてなのであまり綺麗ではない。 建物には看板が掲げられており、かろうじて「研究所」とだけ読める。どのような研究をしているのかは分からない。 誰かいるかもしれないと思い研究所の扉に手をかけた。 中で何か物音が聞こえる。扉を少しだけ開き中を確認する。人影がひとつ。腐敗臭はしないが干した肉が少し傷んだような臭いがする。 アレの臭いとは明らかに違うので大丈夫だろう。 丸い坊主頭のタンクトップを着た男が熱心に紙切れを読んでいる。その足元には汚れた白衣を着て乾いた死体が横たわっていた。
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