菜穂

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だんだんと辺りが暗くなってきた。そろそろ今日の寝床を探した方がいいかもしれない。 ふと目の前に奇妙な建物が佇んでいる。西洋の城に似ており中から明かりが漏れている。 まだ電気が通っている場所があったらしい。 自動ドアを通り抜けると、そこは以前のように明かりが痛い程に溢れていた。 あまりの眩しさに思わず目を細めた。 しばらくすると目の痛みも引きいくらか明るさにも慣れてきた。 横を見ると人気のとないカウンターがありここがホテルだということがわかった。 カウンターから身を乗りだし奥の方を確認したが誰もいない。電気は通っていても今は使われていないのかもしれない。 廃ホテルならお金を払う必要はないだろうしこっそり1晩くらい泊まっても誰も怒らないだろう。 カウンターの向こうに階段があったので2階に上がった。 ずっと廊下が続き左側にドアが並んでいる。手前の部屋のドアを引くと音もなくドアが開いた。 鍵が閉まっているかもしれないと思ったがそうでもなかったようだ。 部屋の中は奇妙な色をした明かりが灯り大きな寝心地の良さそうなベッドがひとつ。冷蔵庫や小さなテーブルもあった。1晩と言わずにここを拠点にするのもいいかもしれない。部屋に入ってすぐのところに、もうひとつドアがあり、それを開けるとトイレと風呂までついていた。蛇口を捻ると錆び混じりの水が出てきた。やがて澄んだ水が出てきたのでそれをひとくち飲んだ。 水を飲むと今までの疲れが出たのかとても眠くなった。 大きなベッドに潜り込み体を丸めて目を瞑る。しかし部屋の明かりが気になって眠れそうにない。明かりのスイッチを探したがよくわからなかった。 仕方ないのでふかふかの掛け布団を頭から被って眠ることにした。 この明かりさえなければもっと気分よく眠れるがきちんとしたベッドがあるだけ良かったと思うべきかもしれない。
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