菜穂

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久しぶりによく眠れた気がする。 カーテンの向こう側は既に明るくなっているようだ。部屋の明かりは未だに点いており不愉快な光を放っている。 しばらくそれを眺めていたら、せっかく良くなった気分が悪くなってきた。とにかく非常に気に障るのだ。 明かりから目を逸らしベッドから出る。良く眠れたからか全身の疲れが取れている。 床に投げられた鞄を拾い上げ部屋を出て階段を降りた。 誰かいる。よく見ると研究所でショットガンを渡した男だった。 彼はエレベーターの前に立っている。 昨日はエレベーターがあることに気づかなかったようだ。もっとも気づいたとしてもエレベーター独特の臭いが嫌いなので使おうとは思わないが。 ホテルから出ようとドアに向かっていたら後ろから悲鳴が聞こえた。 何かあったのだろうかと思った時あの腐敗臭がした。 咄嗟に振り返るとエレベーターの中はアレでいっぱいだった。 無理矢理詰め込んだようにみっちりと詰まっている。 あれは酷い。エレベーターからアレのうち1体が出てきた。1体分の余裕ができたからかアレが次々とエレベーターから出ようとしている。 彼は渡したショットガンを構えているがあの数だと厳しいかもしれない。 放っておくこともできるだろうが実際にあの様子を見てしまったのでそれは気が引ける。 ドアに背を向けてショットガンを構えながらそちらに向かいながら撃った。 多分彼には当たらなかったとは思うが少なくともアレにはだいたいが当たった。 だいたい倒し終わって少し落ち着いてからふと疑問を感じた。 研究所とここはそこまで近くはないはずだ。にも関わらずこうして会ったのはどういうことだろうか。 まさかつけてきたのだろうか。それにも気付かずにいたのだとしたらかなり問題がある。 「ないとは思うけどついてきたの?」 彼はそれに対して否定した。偶然このホテルを見つけて食糧を探そうと思ったらしい。 それを聞いてほっとした。 食糧を探すのを手伝おうかとも思ったがロビーいっぱいに充満している腐敗臭に耐えられそうにもない。 むしろ1刻も早く出ていきたいくらいだ。 彼はこの臭いの中食糧を探す気でいるようだ。平気なのだろうか。 彼に別れを告げてホテルの外に出た。 乾いた土の臭いがしたがそれでも新鮮な空気に感じられた。 このホテルを拠点にするのは諦めようと思う。
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