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社会に出て6年目の春がやってきた。
そんな優しい春の風を感じながら
私は、繰り返しの毎日に正直少し、
いや非常にうんざりしていた。
高校時代、私は早く大人になりたかった。
社会に出れば、こっちのもんだ!って思っていたからだ。
仕事帰りにお酒を飲みに行ったり、
有給休暇を使って海外旅行。
好きな洋服を買ったり、
たまに華の金曜日に飲み会とか参加したり、
いや、むしろ職場恋愛なんてしちゃったり…
なーんて。
人生は自然にキラキラと輝くものだと思っていた。
…だけど現実は残酷だった。
給料なんて笑っちゃうほど安いし、
夢のマイカーなんて買っちゃったもんだから
自由に使えるお金なんてほとんどなく、
この春、私は4年間暮らした一人暮らしの家に別れを告げ、
大人しく実家に戻った。
そんな厳しい現実を受け止め、
引越しという戦いにもある程度勝利を納めたとある土曜日。
地味にお洒落をして映画を観に行くことに。
映画までの時間潰しに入ったのは
奮発して、高級レトラン!
と言いたいのはやまやまだが、
某有名ファーストフード、マックだ。
「あー!やっぱ、ユンチョかっこいい~!」
ニタニタと気持ちの悪い顔で
ポテトを頬張るカオリ。
いい加減、現実みればいいのに…
なんて心の中で悪態をつきながら
ナゲットを食べる私。
ちなみにソースはバーベキュー派だ。
「リカ、早く映画みたい~」
リカが 駄々をこねる。
「もう少しだからお待ちなさい、リカちゃん。」
マイペースなリカの相手を
きちんとしてあげる、優しいアユミ。
花の25歳。アラサー目の前。
そんな我々が、
今から見る映画のタイトルは
【瞬きの数だけキスをして。】
…なんて、恥ずかしいタイトルだ。
しかし現実の恋愛から随分とご無沙汰な
我々はキャッキャッしながら
【瞬きの数だけキスをして。】のストーリーを
あーでもない、こーでもないと妄想する。
そんな彼氏のいない女4人組。
……腐っていようが、これが現実だ。
その時、どこからか着信音が聞こえてきた。
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