失うこわさ

1/2
前へ
/10ページ
次へ

失うこわさ

私は1年前、ある夢を持っていました。 その夢は、私にはとても叶えられそうにもない大きな夢で、 それでも努力すれば、きっと叶えられると、自信がないなりにも、前向きに生きていました。 ところが、ある人に言われたひとことで、 いや、言われなかった言葉で、 私は『諦めろ』と言われたような気持ちになりました。 自信がない所に、そんな気持ちが入って来て、どんどんネガティブになっていきました。 ――『頑張って』 本当に欲しかったその言葉は、誰にも言わずに、 私は結局、その夢を諦めることとなりました。 私は極端に言葉を受け取る癖があって、 きっとあの時先生は、『諦めろ』なんて言ったつもりないんだろうけど、 『あんたが人の将来を変えたんだ』って、勝手に自分の中で、責任をなすりつけたかったんだ。 夢を応援されないことで、夢を諦めさせられ、夢を失った。 その後の私は、虚無感に包まれ、目標のないまま自分の好きなように過ごしてきました。 何もかもがどうでもよくなって、勉強もしない、授業も聞かない、成績も気にしなくなり、 その前の夢はネイリストだったのだけれど、 ネイルも、趣味の絵を描くことも嫌いになった。 休日は朝から晩まで寝続けて、 学校から帰ってきても、また、すぐに布団に入る――。 そんな生活は、正直すごく楽だった。 子供でいられた。 先生、 今となっては、夢を諦めさせてくれたことに感謝しています。 あの半年間は、辛い気持ちを抱えたままでした。 そして今もまだ、先生が与えた『夢を失うこわさ』に怯えています。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加