プロローグ

3/3
前へ
/183ページ
次へ
「おい恭介(きょうすけ)、1人で本当に大丈夫なのか?やっぱり考え直して、俺達と一緒に暮らそうぜ?」 恭介…俺の事だ。 そんな俺を、兄貴がいきなり呼び掛けてきた。 「大丈夫だって。親の保険料も十分あるし、ちゃんと1人で食っていける。それに、アンタも新婚生活を送るんだ。邪魔しちゃ悪いだろ?」 「うむむ、その気遣いは嬉しいんだが…」 「気遣いじゃねえよ。俺も1人暮らしってやつに憧れてたんだ。一石二鳥じゃねぇか」 「……仕方ない。1人暮らしは許そう」 ようやく骨が折れたのか、諦めてくれた。 「だが…なんか悪いな。1人にさせちまって」 「いいって別に。てか、玲(あきら)さん待たせてるんだろ?早く行ってやれよ」 追い返すようにシッシッと手を動かす。 「はいはい、そんじゃあ俺は行くな。何かあったら連絡するんだぞー」 そう言って背中を向けながら手を振り、そそくさと帰っていった。 「………俺は両親が死ぬ前からずっと1人だっての」 兄貴の背中を見ながら、俺は呟いた―――
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

571人が本棚に入れています
本棚に追加