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「おい恭介(きょうすけ)、1人で本当に大丈夫なのか?やっぱり考え直して、俺達と一緒に暮らそうぜ?」
恭介…俺の事だ。
そんな俺を、兄貴がいきなり呼び掛けてきた。
「大丈夫だって。親の保険料も十分あるし、ちゃんと1人で食っていける。それに、アンタも新婚生活を送るんだ。邪魔しちゃ悪いだろ?」
「うむむ、その気遣いは嬉しいんだが…」
「気遣いじゃねえよ。俺も1人暮らしってやつに憧れてたんだ。一石二鳥じゃねぇか」
「……仕方ない。1人暮らしは許そう」
ようやく骨が折れたのか、諦めてくれた。
「だが…なんか悪いな。1人にさせちまって」
「いいって別に。てか、玲(あきら)さん待たせてるんだろ?早く行ってやれよ」
追い返すようにシッシッと手を動かす。
「はいはい、そんじゃあ俺は行くな。何かあったら連絡するんだぞー」
そう言って背中を向けながら手を振り、そそくさと帰っていった。
「………俺は両親が死ぬ前からずっと1人だっての」
兄貴の背中を見ながら、俺は呟いた―――
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