第二章

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「私たち、ここでバイトする。」 いきなり押しかけて、何を言ってるんだこいつらは。 「無理です。この店にはあなたたち全員を雇えるお金がありません。優斗さん1人で背一杯です。」 いつもクールで毒舌な如月が大声で反論する。 「………せっかくの二人きりの時間を邪魔させません。」 小さな声で言ったつもりが、普通に聞こえている辺りが如月が興奮している証拠だろうが……俺もここで働いているという事実を完全に忘れられているだと。 「大丈夫。お金なんか要らないよ。私たちは優斗と働ければそれでいいから。」 ギャルゲーの世界でもこんなに好意を露骨に表すことはしないだろう。 それでも優斗は取り巻きたちの好意を友情だと思って勘違いして涙を流しながら感動していた。 これでこいつらを諦めさせる材料は無くなった。 如月にしてみれば、優斗が喜んで涙まで流しているのに無下に断ってしまえば、優斗への印象が悪くなる。 しかも、タダで働くと言った以上、店の利益を考えたら1人でも人数が多いほうがいい。 「……分かりました。みなさんここで働いてください。」
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