第三章

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両手に持っていた明日香の大量の食器は、僕へと移される。 かなり重い。なるほど、確かに重労働だ。今度からファミレスに行った時にウェイトレスの人に感謝しないと。 それとは対照的に身軽になった明日香は少し機嫌が直ったようで、若干笑みがこぼれている。 「有り難うございました。また来てくださいね。」 大量の食器を運ぶために、バランスを取ってゆっくり運ばなければならない。 一人のお客さんが支払いを終わらせこっちの方向に進んでくる。 僕の後ろには出口が会って、それは当然のことだ。 「……………。」 小声で何か言っているようだけれど、聞き取ることは出来ない。 けれど、僕を見て笑っていると言うことは、少しでも満足してくれたのかな。 トンッ 持っている食器に視界を狭められ、お客さんの足がそこにあることに全く気付かなかった。 元々、食器を持ってバランスを取っていた僕に踏ん張るだけの力は残されていなかった。 駄目だ。 躓いた足が縺れて、後は前方に転ぶだけだった。
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