第三章

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誰かの声が聞こえた。 それは間違いなく僕の知っている人間であり、唯一とも言える男友達だった。 もうスピードで走ってきた星悟は、何やら奇怪な声を出しながら僕と如月さんの間に割って入った。 そして、如月さんを抱きかかえた。 猛スピードだった分だきかかえた後、バランスを崩して転がっていったが如月さんをちゃんと庇っている。 ありがとう、星悟。 肩の荷が降りた様な気がする。 自分の不手際で招いたことが、結果として人を傷付けてしまうかも知れない事態を起こしてしまったが、それも未然に防げた。 後は僕が食器をいかに壊さずに転べばいいかだけれど、張っていた緊張がとけ頭の回転が元に戻った様な気がした。 待てよ。 わざわざ真正面に転ぶ必要は無い。持っている食器を両手で重ねて後ろ向きに転べば食器を割らずにすむ。 問題はその行程を刹那の間に出来るかと言うことだ。 ………出来てしまった。 床に打ち付けた多少の痛みはあるものの、何とか食器を割らずにすんだ。 自分で言うのも何だが、身体能力を高く生んでくれた両親に感謝しなければ。
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