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これは捕縛系統の土の魔法で、上級に値するが詠唱は短い。
だが、上級に値するのはその範囲によるもののため、性能が大まかなこの壁は本来なら高級辺り。
一匹の魔物が壁をよじ登ろうとする――
と、壁から突如針が飛び出した。
「ギェァ!」
魔物は、息を吐き出すかのような悲鳴を残し、その命を終わらせた。
魔物が動かなくなると針はゆっくり引っ込み、元の状態に戻っていく。
それを確認すると、メイはアリアの元へと向かった。
アリアは現在硬直の解けた魔物三体と戦っている最中で、攻撃を仕掛けても他の魔物が攻撃を仕掛けてくるため避けるのを繰り返しているようだ。
このままでは埒があかない。
「アリア、伏せろ!」
「!?」
メイの声に、とっさにアリアは地面に伏せた。
ピゥン!
アリアに攻撃を仕掛けようと跳ねていた魔物二匹は、空を切る音がすると、力無く地面に落ちた。
それに警戒してか、襲いかかろうとしていたらしいもう一匹が立ち止まると、アリアはそれを見逃さずに剣を振るい、止めを刺した。
「なかなかやるな」
「……どういたしまして」
メイは手を差し伸べ、しゃがんでいたアリアを起こした。
パタパタと服に付いた土を払うアリアに、目を向ける。
「…無理をするようなら、戦うな。俺が終わらせておく」
「……いい。私も戦う」
「…そうか」
メイは気づいていたのだろう。
アリアの手が震えていることに。
それでも、アリアの意志を尊重してくれたらしく、メイはそれ以上問うことをしなかった。
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