浄化とかって大抵光か炎のイメージだよね

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ヤシャールの兵は外壁の中間地点で魔物と戦っている。 要請していた増援が来たため、大半の魔物を相手にすることが出来ていた。 だがやはり小型のネズミの魔物なので、いくら何でも数匹は逃がしてしまっている。 魔物は真っ直ぐにヤシャールに向かってきており、数匹単位でチームを組んでいるようだ。 一匹を倒そうと攻撃すると、他の数匹が庇ったり、攻撃を仕掛けてくるのだ。 そのため、くい止めること自体はそれなりに出来ていた――のだが、異変が起こった。 多くを倒すことが出来ていたのは、魔法は効かないが物理攻撃が効いていたからだ。 その上、小さな体躯は酷く脆く、剣の切っ先を当ててしまえば簡単に致命傷を与えることが出来た。 例え、領と領の間が完全に遮られていなくとも、ファボットからやって来た魔物であろうとも、ヤシャールを襲ってきたのなら自分達が戦わなければならない。 逆に、魔物がヤシャールにいくら近くても、ファボット領内であれば、ファボットの者が何とかしなければならない。 例え兵士は強くとも、この沢山の個体をほぼ武器のみで相手をするのはさすがに骨が折れた。 このまま終わってくれれば――そう思っていたのに、現実は期待を簡単に裏切る。 「――はい、未だに抗戦中ですが、もうほとんどトワレの森から出て来ている魔物はおりません……ん?あれは…」 『――どうしました?』 「……いえ、最後尾の方に、形は似ておりますが、他とは違う出で立ちな魔物がこちらに向かっているのを確認しました」 若い兵士は、双眼鏡のように遠くを見る事が出来る魔道具を用いて、とある一匹の魔物を見つけた。 その魔物は外側の外壁におり、一回り大きいその魔物は、完全に汚染されてしまったのか、体毛や肌は全て紫色に染まっていた。 しかも目は酷く大きく、複眼のように瞳が分かれてしまっているのが魔道具でも確認出来た。 爪や歯は鋭く尖り、口から大きく露見している。 その魔物が最後尾にいるのを、様子を随時通信機でアーゼンに伝えていた若い兵士が確認し、伝えたのだ。
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