829人が本棚に入れています
本棚に追加
――正味、20分ほどだろうか?
兵士達には、とても長い時間のように感じていた。
魔力付加させたとしても、全く倒れることがなく、致命傷を作るのは出来ずにいた。
鈍くだが、魔物が意識を兵士達に向け始めたため、羽虫を払うかのように反撃を始めていた。
今の所、死者はいないが負傷者が続々と出てしまっている。
既に兵士達には、士気はあれども、諦めが付きまとっていた。
倒せないのではないかという、諦めだ。
体を倒してみようと言う試みは無駄に終わり、小指など、酷く痛むだろう所を攻撃しても全く反応はなく、ただ身じろぎをするかのように兵士達を払っていた。
それでも尚、魔物はヤシャールへと向かおうとしている。
「…隊長、本当に、倒せるのでしょうか……?」
一人の兵士が、とうとうその言葉を出してしまった。
「なんで、あんな…」
「無理だ…」
「ただでさえ地方なのに、こんな…」
その言葉が引き金のように、次々に疲れていた兵士達は口々に諦めの言葉が呟かれて行ってしまっている。
「それでも、守ると決めたではないか!諦めたらそこで終わりだぞ?!」
「ですが…よろめきもしないではないですか!多くの手だでを行ったのに、こんな…」
「――!」
兵士の弱音に、隊長は返せる言葉が、無かった。
『そんな訳がない』と言う、自信が無かったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!