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だが、今弱音を吐いてしまっている兵士は、まだ若くもあった。
実際に、弱音を口にしているのは20代~30代の前半の者だけで、一部の若い兵士や年配の兵士達は、悔しそうに俯いている。
その光景を見て、ふと、隊長に任命された時に言われた、己が仕える主の言葉を思い出す。
『――先がまだある者には、道を。
多くの兵士達の、先の道を見極めるのは、貴方です。』
言葉を思い出し、一度唇を噛む。
思ったとしても――それでも、口にしないで戦うのが、本来の兵士としての使命だった。
大声で言った。
「――死にたくないのなら、この場から去れ!」
「……え?」
「戦う意思のない奴は、どことなりとも逃げろ!足手まといだ!」
「で、ですが……」
「ですがも何もない!戦う意志も、守り抜こうとする決意も無い者は、唯の一般人だ!
今すぐにその鎧を捨て、とっとと引き下がれ!使命を忘れた者は、もはやヤシャールの兵士では無い!」
「?!」
「引き下がらぬ奴は、少しでも良い、奴を足止めする勢いで集中攻撃だ!負傷者は救護しろ!」
怒りを発散するかのように怒鳴り散らすと、隊長は再び魔物へと立ち向かうために大剣を振るった。
その後に続く者は、弱音を吐かずにいた半数。
「…そんな事言われても」
「なぁ……?」
「……」
もう半数の、弱音を口にしてしまった者達は、隊長の覇気に負けた者や、タイミングを失った者。
そして、死ぬ気は無かった者、隊長の言葉に自分の意思を反芻させる者がいた。
「無駄、だよなぁ?」
立ち向かっていった隊長達は、魔物の抵抗の、腕の一薙ぎに、当たったり避けたりしていた。
先ほどの迫力を掲げた隊長は、いくらか離れたここからだと、何とも情けない。
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