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――咄嗟に、いつでも出来るようにしていた身体能力強化をし、
魔物が動く中、アリアの左右にある魔物の体毛を掴み、抱え込むようにした。
(くそ、下で張ってもらっていた補助魔法が、切れたなこれは)
補助魔法は、あくまで補助。
それなりに使いこなす者は居ても、極める者は、あまり居ないのだ。
そこそこ頑丈でも、この魔物にしたらそれほど強靱ではなかったのだろう。
途端、体が傾いてゆく。
「――マジかよ!」
振り落とされないようにしていたが、このままではアリアが落ちてしまう。
左手で掴んでいた体毛を、アリアの腹部右より辺りの体毛に掴み直し、この後来るであろう事に備える。
――そして、魔物は直立した。
直立といっても、僅かに背中は反っている。
そのため、毛を掴んで体を支えていたのもあり、宙に投げ出されることとなった。
身体強化しているため、手を離すまでにはいかないが、いかんせんアリアの体を安定して支える事が出来ない。
意識がないアリアには、落ちないようにする術はない。
が、何故か腕は、魔物に触れたままだった。
恐らく、この手が触れていなければ、発動は切れるのだろうし、発動中は無意識に触れようとしているのだろう。
だが、どうしても動きには反動が付き物。
投げ出されたブランコのように、手が触れている方向とは反対に力が働いてしまう。
――その事が感覚で解った瞬間、とっさに腕に力を込め、出来る限り腕を引く。
アリアが落ちないように、足も出来るだけ魔物を蹴るかのようにし、下を支える。
『あ、アリア、まだだめ!』
「――ぅ…」
「?!」
僅かに、意識が戻ってきてしまっている。
見ると、ちゃんと起動していた魔法も弱まっているのか、光が弱まっている。
その上目が覚める手前の状態なのか、瞼が僅かに動き、小さなうめき声がする。
手を見ると、ほとんど離れそうになっていた。
男と女のリーチは違うのだ。
そこに失念していたメイは思わず舌打ちをした。
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