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長年仕え、共にいたからこそわかる、確信を持った主の眼差し。
「――信じられないのはわかります。
ですが、確かに私は治ったのですよ」
「……その薬は、どこで…?」
「すみません、口外するのを伏せられてしまいました」
「…そう、ですか。少し、診せて下さっても良いですか?」
「ええ。ですが、手短に」
――少しの時が経ち、ノヴァンは腕を下ろした。
「確かに、全く症状が診られません。健康体そのものです」
信じられない、という驚きと共に出た表情には、
どことなく喜びが浮かんでいたノヴァンの顔に、アーゼンには思わず笑みが浮かぶ。
「これならば、普通に魔法を使っても良いでしょう?」
「ええ、使っても全く問題はありません。
それに、無理をしないほどであれば強い魔法を使っても大丈夫でしょう……
流石に、長年ほとんど使わずに居られたのですから、慣らさなければ」
「そうですね。ですから先ほどから体に巡らせています…長年、苦労をかけましたね」
「アーゼン様こそ…」
ノヴァンは目頭を押さえる。
治らないものだと知っていたからこその、涙が一筋流れた。
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