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「…そうですか、その様な薬があれば――」
「いや、殆ど侵されて居なかったからこその物らしい」
「そう、なんですか…ですが、アーゼン様がお助かりになって、私はとても嬉しく思います…!」
ハンカチを取り出し、流れた涙を拭う。
そうした彼は、本当に嬉しそうな表情をしていた。
「――失礼しました。所で、トワレの森への使いは誰がいたしましょうか?」
「ああ、それですか?既に決めています」
「そうなのですか……」
アーゼンは立ち上がり、服をパーティ用から喪服に着替えるために部屋から出ようとしたため、ノヴァンはあわてて後を追う。
「決めるのはお早いですね。一体誰を向かわせる気なのですか?」
「決まっているではありませんか」
当然、とでも言うかのように、即答するアーゼン。
だが、ノヴァンには心当たりがない。
先を歩いていたアーゼンが、一度歩調を止める。
つられて、ノヴァンも歩みを止めた。
いつの間にかノヴァンを見ていたアーゼンの瞳は、どこか鋭い。
だがそれも、一間だけで直ぐに笑みに変わっていた。
「トワレの森に向かう使者は―― アリアとその護衛、メイですよ」
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