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“知りたいのー?”
……うん?
なんとなく首をしかめると、ローブから顔を出した小さい風の精霊が、軽くそらんじる。
“師恩の風、祖は悠久にして遙かなる偉大な流れとなりて、世界に通ず。その流れを害するモノよ、我らに敵対するものとして認識し、我々は師恩の風と共に在らんことを誓おう。我らと共にありし者に加護を”
その一文を読むと、気が変わったのか、しゅるんと魔法陣の中に引っ込んでしまった。
ズラリと文が書かれているから、全部読んだんじゃないと思う。
そういえば気まぐれなんだっけね、風の精霊。
「そうなのか……」
「……これは高等部になって以降になると、特別必修として習う、ヴァーディリア語で書かれている。
ヴァーディリア語は、いわゆる昔の言語のような物だ。今使ってる言葉より、魔法の効果があるとされてる。ただ、全てまでは解られていないがな」
「さすがメイ様ですね。その通りでございます」
メイがすかさず説明してくれて、婦長さんが同賛する。
……メイはこれを、自分で読んで解ったのか、それとも精霊が居たから風だって解ったのかがちょっと気になる……
「とにかく、着て参加するぞ。一通り事がすんだら向かうからな」
「ん、解った」
とりあえずローブを受け取って、それを着る。
ちょっとぶかぶかしてるけど、そこまで気にならない程度だと思う。
「場所は、ピッドの亡骸のある場所で行われます。後半刻程したら行われると思いますので、お二人は、ごゆるりとお向かいくださいませ」
「あの……なぜ私の腕をつかんで……?!」
「黙りなさい、コーネール。貴方も使用人なのです。ただでさえ人手が足りないのですから、手伝いなさい。さもないと……」
「……い、イエス、婦長様……」
「では、私達はこれで……」
婦長さんは席を外す時にコーネールを掴んで下がろうとして、コーネールは戸惑ったんだけど、ただの無機質そうな言い方なのに、雰囲気が睨むかのような凄みのある威圧感を出した婦長さんに、どこか硬い表情でオドオドとしながら、部屋を去っていった。
……婦長さん……
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