森は魔物を喰うそうです

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  *  *  *  *  *  * 「俺は、【漆黒の翼】のバルト。今回の件で、トワレの森の調査を任されたギルド員だ」 バルトと名乗った、赤髪の、16歳くらいと思われる青年は、まじめな顔で、アリア達に挨拶した。 ……未だに腫れているが。 「……私はアリア。こちらはメイ。ヤシャールの領主・アーゼン様の命令で、大量のピッドが流れてきたと思われるトワレの森の様子を謁見しに参りました」 「……」 「え、あ、お、おう……」 バルトに対して、アリアが真面目に答える。 メイはフードを被っていないが、アリアは被っている。 それでも、メイは自分よりかは幼いことが伺え、そして、バルドよりかは幼い事が明確に解る程度に、アリアは声は幼く、また、身長も小さい方だった。 そのアリアが、バルトが真面目に話しているつもりでもある口調以上にまともに話していたので、少々かしこまってしまう。 「トワレの森は、現在どの様子であるのかを、教えていただきたいです。どの様であるのか、どう感じたのかを、出来れば詳しくお願いします。」 軽く、頭を下げるアリアに戸惑いつつ、バルトは右手で頭を押さえながら、何かを思い出すかのように一間おいてから、言葉を発した。 「あ、ああ……ええと、簡潔に言わせていただく。 もう、あそこは普通じゃ手に負えなくなっていた。 まだ森に入ってすぐなら問題ない……けど、奥の方は……もう、「森」じゃなくなってる。あれは、まるで魔物だ……」 「……そうですか。ありがとうございます」 そう言って、アリアはトワレの森に向かってスタスタと歩き出す。 それに戸惑うことなくメイもついて行く。 そんな、まるで自然な動きに、バルトは「……へ?」と間抜けな声を出した。
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