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その相手は、自分と同年代ぐらいの、光の具合で鈍い銀にも見える黒髪を肩上まで伸ばし、赤みがかった紫色の色をしたやや大きめの、睨んでいるかのような三白眼の瞳。
顔は整ってはいるけど未だ幼い。
身なりを変えると女にも見える気がする。
身なりは素朴な感じで、とても身軽な、軽く旅をする様な旅人の格好をしていた。
(……転生者、ではないみたい。一応“世界”が転生者かそうでないかを見分ける力もくれたみたいだから、多分、違う)
マジマジと現れた少年をアリアは見ていると、少年は持っていたリュックから一つのハンカチと、小さな薬瓶を取り出し、ハンカチに薬瓶の中身を浸した。
「そのままだと、お前の肌には目立つだろ。使え」
「……ありがと」
(別に肌なんか気にしないけどな……?)
そう思いつつ受け取り、濡れたハンカチを額に当てる。
すると、すぅ……と痛みが退く。
そのことに驚き、直ぐに外して額に手を当てる。
痛みが、もう無い。
「何これ……速効過ぎるでしょ」
「まあ、秘薬だしな。普通の薬品じゃ、ここまで早くはないし……一応他の傷口にも当てていけ。
しみないが、この秘薬は乾きやすい。
乾いたら効力が無くなるから、早めにな」
言われてみると、受け取った時は濡れていたハンカチは、今では湿っている程度になっている。
なので、慌ててアリアは木の枝などで出来た擦り傷に当てて、傷を癒していった。
その甲斐あってか、たった一分ほどで乾いてしまった秘薬だが、アリアが実行した修行もどきで付いた傷は全て綺麗さっぱり無くなったのだった。
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