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「凄いわね、この秘薬……」
「まあな。門外不出の秘薬だ。これは売り物じゃないが、あんな姿を見たら、な」
「うぐ……!ど、どこから見てた?!」
「…走っている最中から、だな」
「…マジですか」
(走り込むのに夢中で、気づけなかったのか……)
これからは気をつけなければと決心するアリアだった。
「それと、あまり無策な修行は止めるんだな。
やるなら、魔力を薄く体周りに纏いながらやらないと、直ぐに傷が付くぞ?
女は傷を作らない方が良いと聞くし。
……それにあれじゃ、逃げる時程度にしか役に立たない」
「――え?」
あまり抑揚のない少年の言葉に、思わずアリアは顔を上げた。
「ただの体力作りなら重りを着けた状態で、魔法を纏わず、腕や足を上げながら走り込みした方がまだ良い。
ああ、その状態で魔力を両目に持っていって維持しながらだと、魔力面の方でも修行になるから試してみろ。
じゃあな」
ただそれだけを言い残して去ろうとする少年。
――の、服の裾が、強く捕まれた。
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