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「まあ、貴族だから仕方ないと言えば仕方ないんだろうけどな」
「そ、そう……」
「さすがに驚いた。
まさかこの領地に入る時に兵士に『絶対に粗相を起こすな!怪我をさせたら処罰!』と言われた奴が、こんな所で走り込んで擦り傷作ってるんだからな」
「そう――え?」
「……ん?」
メイの話を聞く限り、どこかおかしい事にアリアは気づく。
「ちょっとまって、有名って、私ってどういう有名なの?私が想像していた有名とは違うみたい」
「……なんかあんたとは意見が食い違っているようだな」
メイもどこかが食い違っているのに気づき、リュックから薬草や、先ほどの秘薬ではない薬瓶を幾つか取り出した。
「俺は世間には疎い旅人なんだが、この領地に入ったら突然兵士が来て、この領地に来た目的を聞かれた。
旅と言っても、俺は途中で手に入れた薬草とか素材、調合した薬を売っている。
それを売って旅費にしていると言ったら、値段を聞かれ、それが基準値を越えていないかとか、品物の品質を軽く調べられた。
そこまでは、別に良かったんだ」
アリアに一度瓶を渡す。
一般に出回っている小瓶で、中を見ると確かに、世間一般で確認されている薬が詰まっていた。
傷用の薬草や腰痛とか痛みに効く薬。
切り傷に使う薬草を煎じた薬、風邪に効く薬、熱冷ましの薬が中に入っていた。
薬品の調合は小等学級の授業でも受けられるが、メイが出してきた薬はその中でも比較的初歩の薬である。
だがとても良い出来だというのが一目瞭然なほどのものが、瓶の中に入っている。
素直に、それは凄いと感心した。
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