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「…ただ、その後注意事項として、兵士が言ってきたんだ。
『この領地に入り、薬を売ることを許可しよう。だが、この領地に入ることで絶対にしてはいけないことがある。それはな……』
一度話を切られて、人相画を出されたんだ。そこにはあんたが描かれてた。
始めは深刻そうな顔だったから、相当な事なんだろうとは思ったんだ。
だがな、予想の斜め上の方の相当な事だったわけだ。
『この方は、ここの領主であられるアーゼン・V・ワーズウェルト様のお嬢様、アリア様だ。
アリア様はお屋敷からこの領地内によくお出かけをされている。
そこで、だ…もしこの方にお会いしたら絶対に粗相の無いように!
そして怪我を一つでもさせないでもらおう!もしその様なことをしたら我らが貴様に制裁を下す!』
ここまでなら、まだなんとか大事に扱う様にと言われているんだろうと思ったんだ。
けど、何か違った。
『アリア様は我らの天使、いや女神とも呼んでも良いお方!あの美しきお顔を筆頭に、あの桃の混じった赤から黄に変わっていられる、大きめであり、やや鋭き瞳!長く流れる睫!』
『ワーズウェルト家独特の、水色であるのに毛先に至るまでに青、紫と色が変わっておられる、あの絹のような美しき髪!』
『白くなめらかな、あのお肌!』
『我らにとって本国の姫以上に、いや、この大陸一お美しいお方だ!』
『そんな我らの女神に手を出してみろ!どうなるか…解るだろう?』
……と言われて、俺はこの領地に入ったわけだ」
「なにそれ、キモい」
メイが、真顔で兵士の声を真似て話していたのもそうだが、想像以上の「有名」の意味合いと兵士に、素直に気持ち悪いと感じたアリアだった。
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