過保護とは酷く厄介なものだ。

16/17

829人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「……お前の父親はなかなかの策士だな」 ぽつりと呟かれた言葉に、アリアは大いに頷いた。 民衆に演説する時。 アーゼンは民衆を見ながら、「今まで友達が居なかった」と、民衆に高らかに宣言し、出来たことを皆で拍手で祝わせたのだ。しかもそれが善意であるかのようにしている。 友達が出来なかったことに後ろめたい思いがある人にとっては、これは拷問に近かった。 高校生・大学生にもなって初めて友達が出来たと母親が限りなく盛大に祝ってくれたという息子の心情にも近いだろう。 それをわざと行い飄々としているアーゼンを恐ろしく思えた。 何も娘の傷口を抉ることないだろう。と思っても、さすがにあの雰囲気では言うことは出来ない。 「メイに言った言葉、つまりは「金は払うから、メイが行けるレベルにまで私を鍛えろ。あわよくば一緒に通って、ボディガードを頼む」ってことでしょ?」 「それに加えて、「薬を作って、家に納めろ。生活資金はそれでチャラ」ということだろ……護衛とかでなく客人ということは、それ相応のものがある場合だ。 しかも、今回迷惑したツケはそれをする事だと言ってきた」 ツケといっても、これはアリアやメイ、使用人達が起こした騒動だ。 アーゼン本人には関係なかったことでもあるが、アーゼンが動いたことによってこの場は治まった。 それに対するツケが生じたのだ。 実は説得が終わった後に「してやったり」というアーゼンの笑みを、二人は見せつけられたのだ。 多くのヒントを提示してのあの会話と行動には、ある種の尊敬を抱くほどのものだった。 少なくともアリアには、敵に回したら怖いリストに父親を追加するほどの事柄だった。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

829人が本棚に入れています
本棚に追加