過保護とは酷く厄介なものだ。

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「ごめん、強制労働させて……」 「いや、いい。一応学園には通う予定だったが、金がないのは事実で、奨学金で行くしかなかったからな。 だから甘んじて受けるつもりだ。むしろ、こっちが感謝だな」 「そっか……じゃあ、入ろうか。夕飯は済んだ?」 「……まだだな」 「なら、夜食を運ばせるね?後コーネールをぶちのめすの、メイもやる? 「……一応遠慮させていただく」 木刀を構えながら訪ねたアリアに、少し悩んだがメイは遠慮した。 なんだー。と言いながら力強く木刀を素振りするアリアに、(どう考えてもアリアだけで十分だろ)と思うほど、キレのいい、今までの不満が膨大であるのが見て取れる素振りだったと言う。 「ま、これからよろしくね」 「ああ。あんたの兄と同じ場所に良い成績で入れてやるよ」 そう言い残してさっさと中に入っていったメイの後ろ姿をみて、アリアは少し固まった。 「……まじでか」 アリアは、兄がとにかく努力して入ったことを知っている。 つまり―― 「……残りの一月は、地獄だ……」 そういうことになる。 10分後、屋敷内から一人の悲鳴があがり続けたが、誰も気にすることなく過ごしたという。 さらに一時間後、どこかスッキリとしたとても良い笑顔を浮かべ、少し前まで悲鳴が起きていた部屋から出たアリアを使用人達は見かけていた。 その笑顔を写真に収めた使用人は、こっそりと裏販売した所、瞬く間に売れたという。 そんな事を、アリアは知らずに、この後待つ地獄に入る前の幸せな気分にただ浸っていた。
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