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優遇された家に生まれ、不便はそれほど無く過ごせて来た。
けれどもその分、あまり外には出れないでいた。
マナーや社交辞令を座学として学んではいたけど、それを生かすこと無く過ごした。
遊んでくれる人はあまりおらず、使用人の人が親身になって遊んでくれることはなかった。
兄はそれなりに遊んでくれはしたけど、しきりに家の中に入れたがった。
学校は行っていたものの、友達は(コーネールのせいもあって)出来なかったから、遊んでくれる人は居なかった。
一目見ればわかる、このワーズウェルトの容姿は、街の人を畏まらせるのには十分だった。
孤独
それが、とても突き刺さっていた人生だと、アリアとしての私は自負していた。
今までの、転生前の私は人付き合いが嫌いで、多くに反発心を抱きながら、影で努力はしつつ、ただただ気だるく何かを諦めながら、生きていた。
アリアという私は、どこか純粋で、自分で出来ることはひたすらやろうとする努力家で、信じた事はひたすら貫き通す。
めげても前を向こうとするような、人間性としては強い子。
その分、むき出しの敵意とかに対する精神面は弱くて、転生前ならガイア夫人の言葉なら簡単に受け流せたはずなのに、今は耐えきれないでいる。
だから、転生前の私の意地を含めて、せめての抵抗にと“私”は声を押し殺して泣いた。
けど、そんな状態なのに、“私”はそんな“私”であることに嫌悪を全く抱かなかった。
――だって、今はお父様がこうしてくれている。
そして、メイという、気兼ね無く話せる遠慮のない友達がいる。
ただそれだけのことだけど――……
――なんだかとても、嬉しいや。
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