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正直、アーゼンはその事を知らなかったのだが、先ほど婦人方に囲まれている時に警備をしていた私兵が軽く耳打ちして知ったのだ。
メイが物陰から様子を伺っていた様だと。
「それに、先ほどの会話も聞いていたのだろう?わざわざ締め忘れて、息を潜めておくだなんてね。
いい趣味をしていると思うよ、私は」
「俺が出ても、アリアは意地を張るだけだ。
……ああいう役はあんたで十分だろ」
「君は、特に地位とかを気にしないタイプの様だね。更に気に入ったよ」
実際に、アリアは父親だからこそ弱みを見せたようなものだ。
これがメイだったなら、泣くことさえも堪えようとしていただろう。
「なあ、メイ君」
「……なんですか?出来れば作業中は集中したいんですが」
「すまないが、君に聞きたいことがいくつかあるんだ。
今更になるが、君の身柄を置いている以上、少しでも事情は聞いておきたくてね」
アーゼンと話始めた辺りから、メイは薬作りを開始しており、その手際の良いメイの薬作りの作業を見つめながら、メイのように床に座り込んだアーゼン。
この場で、直ぐに聞く気なのだろう。
「……あまりあの会場に居たくなかっただけでしょう」
「はは・……バレたか」
「アーゼンさんの作り笑いがいつも以上でしたし、押されがちにも見られましたので。
……本当はああやって囲まれるのが苦手なんでしょう?」
「……君はよく人のことを見ているね」
「性分です。相手を観察して出方を伺わないと、こっちが死ぬことが多かったので」
図星だったらしい。
気まずそうにしているアーゼンを横目に、メイは調合の手を緩めずにいた。
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