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「もう一度言う。
私は、君のことをアリアの友達であり、師範であるという事しか知らない。
これから見受けする以上、最低限は君の身の上を知りたい」
確かにそれは理にかなった事だ。
ちらりと横目でアーゼンを見る。
アーゼンはそれを是と受け取った。
「君は、どこから来たんだい?出来れば名前をフルネームで言って欲しい」
「………出身地は、もう無いですね。
フルネームは、メイ・ルナライト。そう名乗っている」
「そうか…では、その薬学やアリアに教えている知識や実力は、誰かから習ったものかい?
明らかに、学校外で習っているように見える」
「ええ。殆ど母さんに習いました」
「………その人は、実母かな?」
「そうですよ。一応家族も存命しています。両親に、兄と姉、妹とかがいます」
アーゼンは驚いた顔をする。メイは一人っ子だと思っていたようだ。
下手をすると、孤児だとも思っていたようだ。
少し間を空けながら、何かを考える動作をしている。
「……その実力を、母親が……ふむ、思ったより大家族なんだね。
なぜ君は一人旅を?それに、出身地はもう無いというのは?
本来なら学校に通ったりしているものを」
「……俺の家族、あまり定住しないで、フラフラと旅をする様な奴ばかりなんですよ。
だから、まともに一カ所には通わない。
学校は行こうがどっちでも良いって考えで、行かない分多くの知識や実技を叩き込まれたまでです」
「……そうか…凄い家族なんだね」
アーゼンは貴族の生まれだ。
このランテージでは階級はもちろんある。
王族>貴族(上流>中流>下流)>平民>貧民>浮浪民
単純にはこのようになっているが、王族以外は一つの階級でいくつもの称号があるため、細かくするともっと沢山ある。
そんな中、アーゼンは中流貴族として育っていた。
だがお高く止まっているわけでなく、平民や貧民、旅人とも仲良くなったりもしたし、どのような生活をしているのかを見て学んできた。
だが、商人というわけでも、定住せずに移動する遊牧民でもないのに、家族総出で旅人というのは、今まで聞いたことがなかったのだ。
なのでメイの家族の事を考えると、少し引いてしまった。
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