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ボコボコと煎じるために火にかけられていたビーカーの水が沸騰しており、その中に溶岩のようなぶつぶつとした石と、先ほど出した中のいくつかの薬草を入れる。
透明だったビーカーの中身は一度黄色く変化して行く。
その中に、取り出していた小瓶の中の緑色の液体を、ゆっくりと全部加えていこうとし――……
「それで、メイ君はアリアに惚れているのかい?」
「――んな……?!」
突然の、アーゼンからの質問に、思わず瓶を落としそうになるが、何とか落とさずに全て入れ終える。
「そんなわけ無いでしょう。アリアに対する恋心はないですよ」
「いや、よくアリアに教えてやっているからさ……そうか、なんだ。違うのか。拍子抜けだな」
本当にガッカリとしているアーゼンに、(そんなことを聞きに来たのか?)と、内心メイは呆れる。
言葉通りに、メイはアリアに恋心は抱いてはいなかった。
「いやぁアリアにも聞いてみたいんだけど、見るからにアリアも今は脈はない様だったからね。
ちょっとした楽しみだったんだが……ガッカリだよ」
「……いや、楽しみにすんなよ」
「はは。まあ良いじゃないか。
普通年頃になるといったらこういうのもあるだろう?私は既にそういう年頃とは言えないからね。
息子のフェルゼンとそう言う話がしたかったんだけど、あの子はあの子でそういう話は無くてね。
メイ君とは出来そうだと思っていたんだがね……それに」
「……?」
「君のような人になら、信頼は置けそうだからね。
あの子に裏や下心がなく接して来る人を見るのは、久々だから」
そう言って、軽く笑うアーゼンを見て、メイはただため息をつく。
アーゼンは今までの経験から、相手がどのようにして近づいてくるのかを察する勘が備わっていた。
例え今は下流とはいえ貴族、そしてあの容姿。
大抵は、それらに惹かれ、近寄ってくる。
それなのに、メイはそれがなかった。
むしろ、あの騒動の時にアリアが庇ったほどだ。
根拠はないが、信頼できるに足る存在だと、アーゼンの勘は言っていた。
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