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そんなアーゼンに、殆ど無表情だったメイの顔がやや破顔し、心底疲れたかのような顔になった。
「……まるで自分の父さんと話してる気分だ」
「ほう。君は父親が苦手なのかい?」
「いや、そうじゃない。むしろ好きな方だ。けど、変に人に踏み込んでくる所とか、気兼ね無く話してくる所があんたとそっくりだ」
「それはそれは」
にこにこと愉快そうに笑うアーゼンに、分かりやすいくらいにため息をつく。
「……あんたがそんなんじゃ、アリアも大変だっただろうな」
「……さあ?滅多に、顔を合わせたり、話したりはしなかったからね……
むしろ、恨まれてても仕方がないとは思っていたんだ」
「あんたは娘が嫌いなのか?」
「まさか。自分の掛け替えのない家族だ。嫌いであるはずがない」
きっぱりと即答したアーゼン。
なら――と、メイは目を細めた。
「もっと構ってやれ。アリアとは一月くらいの仲だが、あまり一人にしてやるな……でないと、また泣くぞ?」
「うーん、それは困る……けど、こっちにも色々と事情があるんだよ」
「それはもう、既に知っている」
茶こしのような網で、別のビーカーに、火にかけていたビーカーの中身をこし、擦り潰しておいてある薬草を中にいれ、混ぜる。
「昨日のことだ。一人の執事に薬品が余っていないか聞いた。
それは普通の所じゃ置いていないが、このヤシャールじゃあ、多くの物品が確保されてる。
だからあるんじゃないかと思って聞いた。
そいつは言った。
『何故、心臓の発作を押さえる為だけの薬草を所望に?』ってな」
すると、ビーカーの中の液体は今まで黄色だったその液体は淡い緑色へと変貌する。
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